平成28年度補助事業成果報告書

2019〜2021年度補助事業成果報告書

事業名: 日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究開発事業
研究開発課題名: 発達性吃音の小児期疫学調査と回復要因の研究
(英語)Epidemiological survey of developmental stuttering and its recovery-related factors in early childhood.
研究代表者: 国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局・局長 森 浩一
実施期間: 2019年8月23日〜2022年3月31日
報告書作成日:2022年5月31日

1. 背景と目的

 吃音は、幼児期の発症率が1割程度あるにもかかわらず、十分な対策が講じられていない。2〜3歳に好発する発達性吃音は自然治癒率が7割以上あるが、学齢期以降まで改善しない症例では、生活の中で社会参加の比重が上がるために発話の重要性が高まり、吃音による問題が起きやすく、複雑化しがちなので、早期対応が望まれる。しかし、吃音の専門家が不足しているため、治療が全国に行き渡っていない。これに対する最適戦略を探るべく、この研究に先行してAMED研究「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」(2016〜2018年度)(「前研究」と呼ぶ)を実施し、わが国における幼児期の吃音の発症率や関連要因を調べるとともに、幼児吃音臨床ガイドラインの開発を開始した。前研究では、わが国の幼児期の吃音について、有症率や治療への反応は、すでに海外で発表されているものと違うとは言えないことがわかり、国内外の研究結果を利用してガイドラインを作成する合理的根拠が得られている。ここで開発したガイドライン(前研究の暫定版)では、わが国の吃音の治療資源(人的・施設的)が不足していることへの対処として、差し支えが出ない範囲でできるだけ自然治癒を待つ戦略を推奨している。
 しかし、発達性吃音は、8歳頃まで発症と治癒が比較的多いため、実態をよりよく把握し、暫定的に作成したガイドラインで推奨する戦略がどの程度有用であるのかを確認するためには、前研究の約2年間のコホート調査を継続する必要がある。これにより、学齢初期の吃音児の有症率を明らかにすることができ、学校での吃音へのより良い対応に向けて、基礎データを提供できる。また、前研究では吃音の発症に関連する家族歴等の要因を疫学調査で明らかにしたが、研究期間の関係で、吃音の回復要因については調査していない。これは発症要因以上に臨床的に有用な情報である。前研究のコホートを引き継ぐことで、これらを明らかにすることを目標とする。
 吃音の治療法に関しては、幼児期は7割の有効率を示す治療法が複数知られているが、学齢期においては単独で高い有効率を示す治療方法がなく、複数の方法を組合せたり、発話訓練のみでなく、心理面も含めた包括的治療が行われる。しかし、これらに対して十分なエビデンスが蓄積されていない。そこで、学齢期の吃音については、効果測定に使える評価方法を導入することと、現在行われている治療方法の調査、ならびに新たな治療方法の開発のためのパイロット研究を併せて実施した。
  

2. 方法と目標

<1>コホート研究

1) コホート調査
 前研究で実施した5地域(金沢、筑波、相模原、福岡、徳島)の疫学調査のコホートを引き継ぎ、幼児期(本研究開始時4〜5 歳)から学齢初期(満8歳になった時)まで追跡した。ただし一部の対象者(徳島)は、研究期間の関係で満7歳までの調査となる。これにより、幼児期吃音の発症から自然治癒までの全貌を明らかにし、幼児吃音に対応するのに必要な資源を見積もるための基礎資料を提供することを目標とする。
 初年度(2019年度)の調査開始時の対象者としては、前研究の最後の疫学追跡調査実施時に、今後研究を続けることがあれば連絡すると予告しており、その対象児1876名に初回の質問紙を送付した(令和2年度)。以降、返信がなくても、研究参加の継続を明示的に断らず、かつ連絡先不明で返却になっていない場合は、継続して研究対象者とした。これらの対象者に下記の手順で追跡した。
  1. 吃音が発症していない児は1年に1回、既発症児は年に2回の頻度で、前研究と同じ吃音のスクリーニング質問紙による調査を実施。新規発症、再発やその他心配があれば定期の調査以外でも都度連絡をもらうこととした。
  2. スクリーニング調査で吃音発症が疑われる場合は、確定のための詳細な質問紙調査ないし電話調査を実施。
  3. 「吃音がある」と判断された症例には、前研究の成果物の保護者向け説明資料を送付し、2)の対象者に移行する。
2) 吃音を示した児の調査
 吃音を示した児の一部について、予後関連の要因を調査する。保護者に対象児とともに研究分担機関への来所を依頼し、以下のデータを収集する。最終年度は、吃音を示した児にはなるべく面談調査による症状確認を依頼した。検査項目が多いので、2回に分けて実施する計画を立てたが、COVID-19の影響で、来室が困難になるなど、一部省略せざるを得なかった。
  1. 対象児・家族に関する情報の確認・更新(初回面接時)
  2. 発話症状(4ヶ月に1回) ※吃音の消失した状況が12ヶ月以上続けば回復したと判定する。
    • 保護者と言語聴覚士(分担者・協力者)による主観的重症度評定(Packman et al, 2016)
    • 吃音検査法第2版(小澤ら, 2016)による客観評価
  3. 全般的発達の評価
    ・ 乳幼児発達スケール(KIDS; 三宅ら, 1991)
  4. 構音能力の評価
    ・ 新版構音検査 (今井ら, 2010)
  5. 音韻意識・音韻操作能力の評価
    ・ ATLAN適応型言語検査(音韻意識検査)(Adaptive Tests for Language Abilities)(高橋登ら, 2009)
    ・ 音節復唱・逆唱検査・音削除検査(原惠子, 2003)
  6. 協調運動能力
    ・ 改訂版随意運動発達検査 (田中, 2012)
    ・ 発達協調運動障害スクリーニング質問紙(稲垣ら,2019)
  7. 言語能力の評価
    ・ 絵画語彙発達検査(PVT-R; 上野ら, 2008)
    ・ WFT (Word Fluency Test) 語流暢性課題(福島, 2012)
    ・ WPPSI –Ⅲ(知識・単語・語の理解/VCI)
    ・ KABC-Ⅱ(表現語彙)
  8. 気質的特徴の評価 ・ SDQ (Strengths and Difficulties Questionnaire, 野田ら, 2013)
    ・ CBCL (Child Behavior Checklist, 子供の行動チェックリスト日本語版, 井澗ら, 2001)
    ・ CBQ (hildren's Behavior Questionnaire, Rothbart et al, 2001, 日本語版, Kusanagi, 1993) の自己制御機能
    ・ Kiddy CAT (Communication Attitude Test, Brutten & Dunham, 1989) のコミュニケーション態度
 対象者を持続群と回復群の2群(年齢・性別・地域を可能な限りマッチング)に分けて、群間の有意差の有無を調べる。
  

<2>学齢期吃音の評価法・治療法開発の研究

1) OASES-S-J標準化
 吃音がある学童の心理評価質問紙である OASES-S-J(Overall Assessment of the Speaker’s Experiences of Stuttering-school age 日本語翻訳版)の標準化のため、吃音がある小学生(小学3〜6年生)120名にこの質問紙を実施し、質問紙のセクションごとと全体の平均値・標準偏差等を求め、信頼性と再現性の検証と、コミュニケーション態度の調査との相関を調べて妥当性を確認する。すでに出版されている他国のデータと比較するなどのデータ分析を行う。
2) 学齢期介入研究治療
  • 学齢期の吃音治療・支援に関する文献レビューと学齢症例の検討を行う。
  • 結果を踏まえ、吃音治療として効果的であると想定される方法を組み合わせた無作為割付比較研究の治療プロトコールを作成し、臨床研究登録を行い、介入を実施する3施設において倫理審査を受診、参加希望者募集した。
  • 介入開始。
  • 吃音検査の記録を無作為化して、複数の研究者で吃音検査を行い、治療の有効性を調べる。
3) 通級指導教室担当教員及び言語聴覚士を介した在籍学級環境調整調査
 調査協力が得られた通級指導教室担当教員及び言語聴覚士100名に、「イラストでわかる子どもの吃音サポートガイド(サポートガイド)」(小林, 合同出版, 2019年)に基づき、
(1)「吃音のある児童生徒が学校生活で抱える困難の実態調査」として、吃音のある児童生徒が困難を感じていた場面や内容、実施した対応の有効性などを尋ねる調査を行なった。
(2)「『サポートガイド』の有効性についての実態調査」として、3〜8ヶ月間同ガイドを活用した支援を実践した結果を調査した。

<3>幼児吃音臨床ガイドラインの改訂と公開

 前研究にてMindsの手順にしたがい、ガイドラインに対して外部評価委員5名による査読で平均6.0(1〜7の評価で7が最も高い)の全体評価となっていたが、多数の修正意見もいただいていたため、本研究の中で修正を行い、パブリックコメントを経て公開する。
  

3. 成果

<1>コホート研究

1) コホート調査
 年度には前研究の疫学調査コホートの参加者1876人に質問紙を配布し、1405名について回答を得た(回収率:74.9%)。この時点では22名に吃音症状があった(有症率1.6%)。第2年度は1588名に質問紙を配布し、1205名の有効回答(75.9%)、最終年度には1539名に質問紙を配布し、1130名の有効回答(73.4%)を得た。研究終了時点の有効回答が得られた1130名のうち、吃音がある者は18名であり、有症率は1.6%であった。結果的に研究の前後で有症率が同じであるが、5歳以降の治癒と発症がほぼ均衡した結果と考えられる。同様なことはすでに小学生の先行研究でも報告されている。また、この数字は、Andrews and Harris (1964)の1,000人の小児コホート観察で、6歳時点の有症率が1.5%と報告されていることに近い。
 前研究終了時点では、吃音の既往歴がある者は221名であり、その内191名は5歳前後の時点までに吃音が消失し、その時点での治癒率は86.4%であった。今回の研究期間中に新規の発症は6名であり、最終的に累計227名中18名のみに吃音が残存した(治療介入を行なった者4名を含む)。単純に治癒率を計算すると、92.1%となる。ただし、最終年度にのみ回答の得られなかった吃音のあった児が4名いたため、この児の吃音が継続していたと仮定すると、22名の残存となり、8歳前後までの治癒率は90.3%(介入による治癒を含む)である。さらに、介入で治癒した症例(2症例)を自然治癒しなかったものとみなすと、自然治癒率(推測)は89.4%となる。5歳前後までの治癒率と比較すると、それ以降の治癒は37名中15名と低くなったが(ただし、吃音ありで最終年度の転帰不明の12名を吃音継続と仮定)、この治癒症例の中にも、ぶり返しや消失からの観察期間がまだ短いケースもみられるため、今後も観察と分析を継続していく必要がある。前研究では約2000名の参加者から出発した研究であり、最終調査までデータが得られたのは当初の6割弱になっているものの、吃音の継続ケースは、毎回でなくても、比較的安定した回答確認がおこなわれており、ある程度の信頼性はえられていると考えられた。また、脱落していくのは吃音に対する興味関心のあり方も反映されていると考えられ、無症状や消失例、あるいは軽症例が多かったのではないかと推測する。ただし、脱落は誤差要因であり、前研究からの引継ぎ時点で吃音があった児5名と、本研究中でも4名の脱落者がいるため、これらをすべて吃音継続として計算すると、88.1%の治癒率になる。これらの計算から、治癒率の推定には数%の誤差がありうるものの、おそらく85%を大きく下回ることはなさそうである。
 なお、調査中に吃音があると判定された症例には、保護者向けの吃音についての情報を掲載したパンフレットを送付した。また、前研究ではコホートを維持する目的で、参加者のうち、希望者(約600名)に対して、子供の年齢に合わせて発達やことばについての話題を記載したメールマガジンを毎月、合計27回配信し、その中に吃音についての情報も記載していた。そのため、上述の治癒率は、介入が全くない状態での「自然治癒」とは言えない可能性がある。実際、吃音児の保護者から、配布したパンフレット等により、将来の見通しがわかったので安心することができたという感想もいただいている。そのため、今回の治癒率の結果は、一般状況よりは良い環境のものになっている可能性がある。しかし、メールマガジンを購読していたのは参加者の4割程度であること、吃音の情報提供についてはインターネット検索で容易に得られるような内容であること、さらに、これらのメールマガジンは研究のホームページで公開しており、吃音児の保護者に配布したパンフレットについては、「幼児吃音ガイドライン」の添付資料として自由にダウンロードして閲覧できるようになっていることからは、少なくとも今後は、これらの情報提供を特別な介入だと見なす必要がないとも言える。また、最終的な吃音の残存率が、半世紀以上前の研究と大きく異ならないということからすると、情報提供は保護者の不安の軽減に役立ったとは言え、吃音児を減らす効果はほとんどなかったとも考えられる。
 これらのことから、幼児期の吃音は、約1割という高い累積発症率を示すものの、同時に高い自然治癒率を有し、前研究の暫定ガイドラインで採用したできるだけ自然治癒を待つ戦略は有効であると思われる。さらに、保護者に適切な情報提供をすることで、自然治癒を待つ期間における不安やストレスを軽減できることが示されたと言える。最終版のガイドラインでも自然治癒を待つ戦略が提唱されて、また、保護者等に配布できる添付資料も作成・添付して、自由に入手できるようにしている。
2)吃音を示した児の調査
 2019年実施の調査結果を得て、2020年1月から直接評価を実施する計画を立案したが、COVID-19の影響で、直接評価の実施が困難な状況が続いた。初回(2020年冬)就学直前、2回目(2020年夏~秋)小学1年時、3回目(2021年秋~冬)小学2年時に実施した。初回協力者は、吃音持続群10名、吃音消失群23名であったが、最終的にほぼ全ての検査を実施でき、性別、地域をマッチできたのは、吃音持続群9名、吃音消失群9名であった。
 結果は、構音障害の有無、協調運動能力、言語力、全般的発達には、有意差は認められなかった。就学直前に実施した音韻意識・音韻操作能力に関して、正答率に有意差は認めなかったが、反応時間に有意差があり、吃音持続群の方が、吃音消失群よりも有意に延長していた (t = 2.738, p < .01)。同じ症例に期間を空けて再検査を実施しているが、結果は、解析中ある。
 コミュニケーション態度を測定するKiddy CATの結果では、吃音持続群の得点が消失群よりも有意に高く(t = 2.3605, p < .05)就学前時点で、コミュニケーションに苦手意識が育ってきていることが推察されるが、あるいは、コミュニケーションの消極的なタイプの子どもは発話機会が少なくなることなどで吃音が持続しやすいという可能性も考えられる。他の評価結果と併せて分析を継続していく必要がある。

<2>学齢期吃音の評価法・治療法開発の研究

1) OASES-S-J標準化
 OASES-S-Jを、吃音がある小学生120名(研究初年度100名、第2年度20名)に質問紙を実施し、論文として出版した。内的整合性はセクションIを除いて概ね良好であり、再検査信頼性はすべてのセクションで高い値が得られたことから、一定の信頼性があることが確認された。コミュニケーション態度との相関も認められ、スケールの妥当性があると考えられた。すでに発表されている米国とオランダの結果とは、多重比較検定を補正すると統計的に有意差がなく、国際的に共通する尺度で吃音に関する生活への影響度(インパクト)の評価ができる検査であると結論した。一方、成人のOASESの検査と異なり、床効果が見られる質問項目が比較的多く、学齢期は成人ほどには吃音が生活全般に影響している者が多くはないことが示唆された。
2) 学齢期介入研究治療
 献調査により学齢期の吃音に効果があると想定される2つの方法(直接的発話指導と心理教育)を組合せて各3ヶ月間実施する無作為割付スイッチオーバー比較研究の治療プロトコールを作成し、3施設において合計30名に介入を実施した。前半の介入は30名全員が終了したが、コロナ禍等によるリクルートの時期の関係で、3月時点でスイッチオーバー後の介入や終了後3ヶ月の評価が未完了の者が4名おり、最終評価に至っていない。最終評価はビデオ撮影した吃音検査を盲検化して無作為割付とするため、全ての介入終了後に解析を行うこととなっており、最終解析結果はまだ出せていない。データ収集が全て終了した20名のデータについて暫定分析を実施したところ、前半の3ヶ月のプログラムにおいて、直接的発話指導を行った群の吃音中核症状頻度の平均は19.95から9.65に減少し(p < 0.05)し、心理教育を行った群は平均23.38から17.95に減少した(p < 0.05)。
3) 通級指導教室担当教員及び言語聴覚士を介した在籍学級環境調整調査
(1)吃音のある児童生徒が学校生活で抱える困難の実態調査
 99名より回答があった。児童生徒が実際に困難を示した場面で多かったのは、他の子どもからの指摘(81名)、新入学、進級時(79名)、音読(79名)などの場面の困難が多かった。また、大勢の人の前で話す(74人)、他児が吃音の話し方をからかったりする(73人)などの内容の困難が多かった。
(2)「サポートガイド」を活用した支援
 83名より回答があった。対象者の内、サポートブックを活用した対処を実施したのが71名、実施しなかったのが12名だった。実施しなかった理由(複数回答)で多かったのは、「児童生徒や保護者から、困難の訴えや相談がなかった」(8名)、「児童生徒や保護者から、学級担任等に対する困難への対応の要望がなかった」(8名)であった。
 サポートブックの活用が有効と回答した者が多かった場面は、「授業の発表」(52名)、「音読」(48名)、「日直当番」(46名)等の授業や学級活動、「他の子どもからの吃音の指摘」(45名)、「他の子どもからのからかい」(39名)等の他児との関わり、「進級・進学先への引き継ぎ」(44名)、「新入学・進級時」(35名)、等の新しい環境だった。有効と回答した者が多かった場面は、「からかい」(45名)、「吃音の話し方への質問」(45名)、「吃音への無理解」(43名)等の他児との関わり、「吃音への無理解」(39名)、「時間制限」(30名)等の担任等の対応、「大勢の人の前」(38名)、「苦手な活動への不安や緊張」(30名)、「まとまった量を話す」(29名)等の苦手な発話場面だった。
サポートブックの活用が有効と回答した者が多かった方法は、「吃音の理解」(64名)、「困難や支援ニーズの把握」(58名)、「話の中身に注目」(58名)、「話を良く聞く」(58名)、「言葉が出るまで待つ」(55名)等の担任等の対応、「クラス全体に吃音の説明」(52名)、「からかう子ども等に吃音の説明」(51名)等の他児への対応だった。
これらにより、ここで調査に用いたような指導者向けのガイドブックは、
(1)吃音のある学童が困難と感じている場面についての対応の記載があり、
(2)場面や方法によって4割から8割の有用性を示していた
ことが明らかになった。

<3>幼児吃音臨床ガイドラインの改訂と公開

 前研究での改訂を受け、2020年3月31日(本研究開始前)から同年8月31日(本研究開始直後)まで、バブリック・コメントを募集した。有用な意見が多く、改訂が大幅となったため、2021年1月22日から同年3月1日まで、第2回目のパブリック・コメントを募集し、再度の改訂作業を行い、2021年9月30日に、完成版(第1版)を本研究のホームページに自由にダウンロードできる形で公開し、関連学協会に連絡した。その後、関連する学協会のホームページに同ガイドライン公開ページへのリンクが掲載され、公益財団法人 日本医療機能評価機構のMindsガイドラインライブラリにも登録された。複数の新聞に関連記事が掲載されたこともあり、現在、多くの検索サイトで、「吃音 ガイドライン」として検索すると、トップで表示されるようになっており、幼児吃音についての正しい理解の普及に役立つものと思われる。
 なお、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会と日本医療機能評価機構からは第1版に対する詳細なコメントをいただいており、今後は日本吃音流暢性障害学会の幼児吃音臨床ガイドラインワーキンググループで改訂作業を継続することとなっている(同学会理事会承認済み)。
  

English Summary

1. Cohort study of early childhood stuttering

1) Epidemiological survey for childhood stuttering
The cohort of children in five communities across Japan was monitored regarding stuttering for 3 years from 5 or 6 to 7 or 8 years of age. The prevalence of stuttering was 1.6%. The overall recovery rate since preschool was estimated to be 86%. Only 7 children underwent direct intervention as a result of the waiting strategy for natural recovery, as suggested in the Clinical Guideline for Preschool Child Stuttering.
2) Factors that differentiate persistence from recovery
Nine persistent and nine recovered children were compared in various linguistic and developmental tests. While many of the tests found no difference, the latency for word reversal was significantly longer for the persistent than the recovered children.

2. Development of evaluation and intervention methods for school age children who stutter

1) Standardization of OASES-S-J
Japanese translated version of Overall Assessment of the Speaker's Experience of Stuttering (OASES) for students (OASES-S-J) was administered with 120 elementary school students from 3rd to 6th grades who stutter. The internal consistency and test-retest reliability were confirmed. Significant correlation with the Communication Attitude Test validated usefulness of OASES-S-J. There was no statistically significant difference between the results of this study and those of English and Dutch versions in previous studies.
2) Randomized switchover intervention trial of school age stuttering
After systematic literature review, a treatment protocol for stuttering comprising a randomized switchover trial of two methods (direct speech instruction and psychological education) for 3 months each. A total of 30 school age children at 3 facilities participated in the study. As of March, 2022, while the first half of the intervention was completed by all the participants, 4 people were yet to complete the switchover part, and some others were waiting for post-treatment evaluation at 3 months afterwards. A preliminary data analysis of 20 subjects in the first three-month program showed that the average frequency of core stuttering behaviors of the direct speech instruction group decreased from 19.95 to 9.65 (p < 0.05), while that of the psychological education group decreased from 23.38 to 17.95 (p < 0.05).
3) Survey of difficult situations and indirect intervention efficacy using a guidebook
(1) Difficult situations for children who stutter (CWS) in school
A total of 99 teachers in charge of speech and language disorders, and speech-language-hearing therapists (SLHTs) participated in this study. The most frequently reported situations that CWS perceived as difficult included peers’ pointing out (81 respondents), moving up to the next grade or school (79), and oral reading (79), as well as speaking to many people (74), and teasing or bullying (73).
(2) Indirect intervention using a guidebook
Of the 83 teachers and SLHTs who responded, 71 had the chance to use the guidebook for intervention. Effectiveness of the book was reported in those situations like presentation in class (52 respondents), oral reading (48), day duty (46), being pointed out about stuttering (45), teasing or bullying (39), explaining to successor (44), and moving up to the next grade (35). The ratio of effective situations/events ranged from 40 to 80%.

2. Publication of Clinical Guideline for Preschool Child Stuttering

After a second round call for public comments, the final revised version was posted at the research website (open access) on 30th of September, 2021. Relevant parties were notified of the publication. It has since been publicized by several medical associations as well as at the Minds guideline collection site.