第26回 子どもの望ましい行動を増やすための関わり
メールマガジン第26号

子どもの望ましい行動を増やすための関わり

配信年月:2018年11月号

1. 子どもの成長と大人の声かけ

3歳児健診での調査に協力してくださったお子様は、そろそろ4〜5歳に成長している時期かと思います。自己主張が強くなる2〜3歳や、「なんで?」「どうして?」と好奇心が強くなる3歳を過ぎ、今は自分や周りの人の行動に目を向け、簡単なルールを守りながら友達と遊べるようになってきている頃ではないでしょうか。

また、着替える、片付ける、あいさつをするなどの、身の回りのことも少しずつできるようになってきて、大人が子どもに期待することも少しずつレベルが上がっているかもしれません。その結果、「まだ着替えてないの?早くしなさい!」「片付けて!」「ごめんなさいでしょ」などの声かけが多くなっているかもしれません。

この時期はまだまだ、状況によって、出来たり、出来なかったりと安定しない時期だと思います。今後、成長とともに少しずつできる割合は増えていきますが、さらにその割合が増えやすくなるような関わり方を、今回はお伝えしたいと思います。

2. 子どもが必要としているもの

子ども達は、お父さん、お母さんに、日々何を求めているでしょうか。

それは、お父さんやお母さんが自分に向けてくれる関心・注目です。実は、子どもだけでなく、大人も含め人は皆、注目・関心を求めています。

例えば、私たちが家族のために料理を作り、それを皆で食べている場面を想像してください。もし家族が「美味しいね!」「作ってくれてありがとう」と言いながら食べてくれたら、とても嬉しいと思いませんか?その一方、黙々と食べているだけだったら、「美味しくないのかな?」「頑張って作ったのに悲しいな」という気持ちになりませんか?

子どもも同じです。自分が頑張ってやった行動、うまく出来たなと思う行動、全てお父さん、お母さんにほめてもらいたいのです!

3.「またやろう!」と思うためには

さて、実際の生活を振り返ってみるとどうでしょうか。もちろん、「しっかりほめている」というお父さん、お母さんもいらっしゃると思いますが、ある程度できることが前提となってくると、「どうして順番を守らないの?」「弟とけんかしないで!」「ボールは投げたらダメ!」などと、子どもがして欲しくない行動をしている時に、声をかけている(注目・関心を与えている)ことが多くなっていないでしょうか。私自身は子育ての中で、「叱るときしか声かけをしていないな…(ため息)」と自分を振り返った経験があります。

それでは逆に、子どもがしてくれると嬉しいなと思う行動をしているときは、どのような対応をしているでしょうか。「弟と仲良く遊んでるわ〜」と微笑ましい光景を見ながら、一息ついていたりすることもあるかと思います。お父さん、お母さんの心の中では「子どもも成長したわ」と嬉しい気持ちになっているのですが、それは子どもには伝わっていません。

ここで、この「弟と仲良く遊ぶ」という行動がお父さん、お母さんにとって、「して欲しい行動」であるのであれば、子どもがそれをやっている瞬間、あるいは直後に、そのことを褒める必要があります。「弟におもちゃを貸してあげることができたのね。小さい子にゆずってあげられるなんてかっこいいね〜。」などと声をかけるのです。

すると、「この行動をすると、お母さんが褒めて(注目して)くれる!」→「もっとやろう!」と子どもは思うようになります。

この時に大事なことは、子どもがやっていること(例えば、「弟におもちゃを貸してあげることができた」「一人で着替えた」など)を具体的に言葉にして、さらにお母さん、お父さんがどのように思っているか(例えば、「かっこいいね」「ステキだね」「やさしいね」など)を伝えることです。「いい子ね」といいうぼんやりとした表現ではなく、「〇〇の行動に対して、私は△△な気持ちになった」とはっきりと伝えることです。

普段、あまり褒めることをしない場合は(日本人には結構多いと思いますが)、上記のようなセリフをなんだか気恥ずかしいなと思うかもしれません。でも、ちょっと試してみてください。きっと子どもの嬉しそうな顔、あるいはちょっと照れくさそうな顔が返ってくるかと思います。そして、このような声かけを続けていくことで、やって欲しい行動が徐々に増えていくのです。

 

4. 吃音の豆知識(音の繰り返し)

これまで皆様にご協力をいただいてきた調査では、吃音かどうかを判定するために「ことばの一部や同じ音を2回以上繰り返すことがありますか」との問いを設けています。「あるか、ないか」で聞かれると「なくはない」ということで「ある」と回答されている方、そして「ある」と回答することで不安になる方もいらっしゃるようですが、「ある」ことは発達上でよくあることです。また、我々大人でも、慌てているときに繰り返しが出ることはよくあると思います。

確かに、この「音の繰り返し」は吃音の特徴の一つですが、それが子どもにとって邪魔・困るものになっているかどうかが重要です。皆様に繰り返しがどのくらいの頻度であるかを確認すると、「一週間に1回」、「1日に1回」などのお答えが返ってくることがありますが、これくらいの頻度では全く邪魔ではないですし、心配なさる必要はありません。

1日に何度も見られ、かつ子どもが苦しそうに話している、困っている、そして親も子どもの話している内容より話し方につい注意が向いてしまうような時に、言語聴覚士にご相談いただくとよいと思います。

 

5. 参考文献・資料

  1. 今井和子: 0歳から5歳児 行動の意味とその対応. 小学館, 2016
  2. シンシア・ウィッタム著. 上林靖子・中田洋二郎・藤井和子・井澗知美・北道子訳: 読んで学べるADHDのペアレントトレーニング. むずかしい子にやさしい子育て. 明石書店, 2002

文責:酒井奈緒美(研究分担者,国立障害者リハビリテーションセンター )

 

AMED研究「発達性吃音の最新療治法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」
研究代表 国立障害者リハビリテーションセンター 森 浩一

 

<前の配信> <メルマガ一覧に戻る> <次の配信>