第8回 お子さん同士の遊びの成長

第8回のテーマは<お子さん同士の遊びの成長>についてです

配信年月:2017年5月

お子さんが2〜3歳頃になると、よく同年齢のお子さんと遊ぶようになりますよね。でも、一緒にいるのに意外に同じことをしていないことがあります。お気づきになっていたでしょうか?お子さんの成長とともに遊びでの子供同士の関わり方も変わっていくことが研究でわかっています。今回はこの話題を取り上げ、お子さん同士の遊びを豊かにするにはどうしたらよいかを考えたいと思います。

1. お子さん同士の遊びの成長の過程

2〜3歳頃のお子さんは、例えば、同じお砂場の中で、1人は砂で小山を作って遊び、もう1人はプリンの空きカップに砂を積めて遊ぶなど、互いに関わりを持たずに、違う遊びをしていることが少なくありません。しかし、砂で小山を作っていたお子さんが、お家に帰って、プリンのカップにティッシュを積めて遊び始めるなど、公園で遊んでいたもう一人のお子さんを見ていないようで、実はよく見ていたことが分かることがあります。

3〜4歳頃になると、他のお子さんと一緒に関わる様子が増えてきます。この時期のお子さんは、同じ遊びをしているように見えても、それぞれのお子さんの抱く遊びのイメージが違っていることがあります。わいわいと楽しそうに大きな建物を一緒に作っている2人のお子さんに、「何を作ってるの?」と尋ねると、1人は「キュウボイジャー(宇宙戦隊キュウレンジャーに出てくるマシン)の基地だよ」と言い、もう1人は「消防署だよ。はしご車がいるんだ。」と教えてくれます。そして、2人は、仲違いすることなく、「キュウレンジャー、出発!」、「火事です。ポンプ車出動せよ」などと、同じブロックで作った建物をそれぞれ違うものに見立てて遊び出すのです。

4〜5歳頃になると、段々と、お子さん同士で、遊びのイメージを共有するようになります。例えば、おままごとをする際に、お家には誰がいるか、どの場面(夕食の準備、赤ちゃんとお出かけなど)を取り上げるか、細かい設定(夕食のメニュー、赤ちゃんの服装など)はどうするかを話し合ったり、誰がどの役割をするかを相談して決めたりします。

以上、子供同士の遊びが成長と共に変わっていくことについて説明しました。ここに示した年齢はあくまで目安なので、お子さんによっては幅があります。遊びによって、日によって、また、相手によっても変わることがあります。同じ年齢の子供が一緒に遊んでいても、それぞれいろんな関わり方をしていることもよくあります。

2. お子さん同士の遊びを豊かにするには…

お子さん同士の遊びを豊かにするには、次のような働きかけを行うとよいでしょう。

第1は、ご家庭での保護者の方との遊びの充実です。お子さんは、保護者の方との遊びを通して、他者と関わって遊ぶことの楽しさを実感すると共に、将来お子さん同士で遊ぶ際に必要となる、他者との関わり方や、遊び方の基本を体験します。例えば、おままごとのお母さん役には、ご飯とおつゆを盛り付け、「ごはんの準備ができましたよ、お父さん、赤ちゃん来て下さい」と他の家族を誘う役割があることを保護者の方と行うおままごと遊びで体験することで、お子さん同士でおままごとをする際にスムーズにその役割ができるようになるのです。

第2は、公園や自治体が設ける地域の遊び場を活用するなどして、他のお子さんと接する機会を作ることです。なお、前述したように、年齢が小さいお子さんは、一見他のお子さんに関心がないように見えて、実は様々な影響を受けていることがあります。そのため、他のお子さんと一緒に遊ばなくても、他のお子さんと遊びの場を共にしているだけでも十分です。

第3は、お子さん同士で遊んでいる姿を見守りつつ、お子さん同士で解決できない時に手をさしのべることです。お子さんは、他の子どもとのいざこざを通して、言葉で自分の気持ちを相手に伝えたり、自分の気持ちを抑えたり、他のお子さんの気持ちを知ったりするなどの経験ができます。そこで、お子さん同士で、多少いざこざがあっても、まずは見守る必要があります。ただし、いざこざがエスカレートし、お子さん同士で解決できそうにない時は、大人が双方の気持ちや考えを尋ね、どうすればいいかをお子さんと一緒に考える必要があります。

お子さん同士の遊びの成長には、性格や発達、集団生活の経験の有無、相手のお子さんとの相性など、様々な要因が関わっています。そこで、お子さん同士の遊びの成長には、これらを把握し、お子さん一人一人に合った働きかけを行う必要があります。なお、どのようにお子さんに働きかけたらよいかわからない場合や、お子さん同士の遊びや関わりにご心配な点や気がかりな点がある場合は、通われている園の先生や、お住まいの市町村等の保健センターや幼児相談室等にご相談されるとよいでしょう。

3. 参考図書

  • 武藤隆・岡本祐子・大坪治彦(編): よくわかる発達心理学(やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ). ミネルヴァ書房, 2004
  • 高杉自子・柴崎正行・戸田雅美(編): 保育内容「言葉」(新・保育講座10). ミネルヴァ書房, 2001

 

文責:小林宏明(研究分担者, 金沢大学教授)

AMED研究「発達性吃音の最新療治法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」
研究代表 国立障害者リハビリテーションセンター 森 浩一