第12回 メディアと子どもの発達

第12回のテーマは<メディアと子どもの発達>です

配信年月:2017年9月

1. メディアとの接触が多い現代

テレビやビデオ、ゲームにインターネット上の動画など、映像メディアとの接触は、我々の生活に欠かせないものとなっています。もちろん子育てもその生活の中で行うわけですので、赤ちゃんの時期からメディアに接触することが昔より多くなっていることは、簡単に想像できます。そのような中で、「赤ちゃん、子どもにはテレビを見せない方がよい」「ビデオやスマホに子守りをさせてはいけいない」と、明確な根拠はなくても、なんとなくメディアは子どもにとって悪いものというイメージを持っていらっしゃる方が多いのではないかと思います。では、全く見せない方がよいのかと言えば、そうとも言えない気がしますし、何よりそれは非現実的です。

2. テレビの視聴時間と発達との関連

NHK放送文化研究所で、「子どもに良い放送プロジェクト」という、メディアと子どもの発達との関連について研究がなされています。

そこでは、テレビの視聴時間が乳幼児の発達に及ぼす大きな影響は、今のところ認められないとまとめられています。ただ、外遊びをする時間の長さと、絵本を読み聞かせる頻度は、テレビの視聴時間と関係しており(1日の生活時間には限りがあるので、テレビやビデオに長時間接触することは、おのずと外遊びや絵本の読み聞かせの時間が少なくなります)、この外遊びの時間と絵本の読み聞かせの頻度は、ことばの発達に影響すると報告されています。つまり、テレビを見ること自体は発達に大きな影響があるとは言えないが、テレビを見る時間が長くなることによって、身体を使って遊ぶことや、お父さんお母さんに絵本を読んでもらう機会が減ることは、発達にとって望ましくないと言われています。

3. どのようにテレビを見るか

テレビは日常生活では見ることのできないものを見せてくれることがあるように、良い情報源でもあり、学習や楽しみの材料でもあります。幼児番組は子どもの発達段階に合わせた内容となっていますので、子どもの発達を促す効果があるとの報告もあります。総合的に考えると、子どもの発達に必要な他の活動時間に影響が出ない程度に、平均して1日30分から1時間程度、テレビを視聴することは悪いことではないようです。ただ、子どもの発達に大きな影響を与えるのは、人とのコミュニケーションです。テレビはよい情報源ですが、質問には答えてくれませんし、言葉の意味も説明してくれません。子どもと一緒にテレビを見て、それを会話の材料とする(例:子どもが知らない言葉について「◯◯って何?」と聞いてくれば意味を教えたり、こちらから登場人物について「◯◯は悲しそうだったね」などと説明する)ことが、テレビを効果的に見せる方法とも言われています。家族のコミュニケーションの道具として使うようであれば、悪影響はありません。とはいえ、毎日の忙しい中、ずっと子どもにつきっきりでテレビを視聴することは難しいですし、少しくらいテレビに子守りをしてもらいたいなという気持ちは誰しもあると思います。時にはそれも「あり」です。その時間が多くなりすぎないよう、バランスがとれればよいのではないでしょうか。

 

4. 吃音のまめ知識

以前のメルマガに記したように、吃音は、難しい文で表現しようとしたとき、興奮したときなど、出やすい状況があります。一方、出やすい時期というのもお子さんによってはあります。運動会などの行事の前に吃音が増え(おそらく日々が練習等で忙しかったり、プレッシャーを感じていることが影響している可能性があります)、長期の休み等に減るということがあったりします。これらの波を繰り返しながら、成長とともに徐々に話し方がスムーズになってくる場合もありますので、かかわる大人の話しかけ方や聞き方を調整しながら、長い目で見ていくことも大切です。

 

5. 参考図書

  • サリー・ウォード著. 塩見稔幸監修.槙朝子訳; 0~4歳わが子の発達に合わせた「語りかけ育児」. 小学館, 2001
  • 日経DUAL. 「テレビ子守り」子どもへの影響は小さい? テレビ、スマホとの付き合い方を科学的に知る(連載バックナンバー).
    URL: http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=1815
  • 菊池良和: 子どもの吃音ママ応援ブック.学苑社, 2016

 

文責:菊池良和(研究分担者, 九州大学)
酒井奈緒美(研究分担者、国立障害者リハビリテーションセンター)
AMED研究「発達性吃音の最新療治法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」
研究代表 国立障害者リハビリテーションセンター 森 浩一