第5回 3歳の絵本

第5回のテーマは<3歳の絵本>です

配信年月:2017年初頭

第2回のメルマガで「3歳の遊び」をテーマとし、その中で少し絵本について触れましたが、今回は絵本がこどもの成長にどのような影響(効用)があるのかを考えてみたいと思います。

1. 絵本で育まれるもの

3歳児が絵本を読む(聞く)ためには、読んでくれる人が必要です。つまり、絵本の時間は、忙しいお母さん、お父さんが手を止めて、自分のために使ってくれる時間となります。そして、膝の上に抱いたり、添い寝をしながら、素敵なお話を聞かせてくれる。一日の中のほんの5分とか10分ほどのことですが、このような時間を積み重ねることで、こどもは自分が大切にされていることを実感します。

この「自分は大切な存在である」との感覚は「自己肯定感」と呼ばれ、人間の生きる力の基礎となる大事な感覚です。是非、小さい頃から育みたいものです。

2. なぜ同じ絵本?

第2回のメルマガで、「お気に入りの絵本は何度も読んであげましょう」と書きましたが、こども自身が、気に入った絵本を何度も読みたがる(読んでもらいたがる)ことがありますよね。なぜ、同じものを好むのでしょうか。

3歳は、自己主張が激しくなり、何でも自分でやってみたい時期ですが、現実は厳しく!?うまくできないことも多いため、こどもは日々イライラや不安などの感情を経験しています。

そんな中、内容をすでに知っている好きな絵本を読む(読んでもらう)ことは、安心につながります。また「ぼく知ってるもん」という自信にもなる訳です。

そして、絵本自体に繰り返しが含まれているもの(「おおきなかぶ」や「てぶくろ」など)も、見通しを与えてくれるものであり、安心・自信につながることから、この時期のこどもは大好きです。

 

3. 吃音(どもり)のまめ知識

「吃音(きつおん)」、いわゆる「どもり」は2〜4歳の子どもに多く見られる話しことばの特徴です。

覚えたてのことばを使おうとするとき、難しい文で表現しようとするとき、伝えたいことがイメージとして浮かんでいるのにうまくことばや文で表現できないときなどに、吃音が生じやすくなります。また、早く話そうとする時、そしてよくも悪くも、気持ちが高ぶっている時なども吃音が出やすくなります。

このように言語(ことば)、運動(話すという動作)、感情など、「話す」という行為に関係してくる脳の活動が忙しくなってくると、吃音が出やすいと言われています。

 

4. 参考図書

  • 瀧薫: 保育と絵本. 発達の道すじにそった絵本の選び方. エイデル研究所, 2010
  • トルストイ 文. 佐藤忠良 絵. 内田莉莎子 訳: おおきなかぶ. 福音館書店, 1962
  • エウゲーニー・ラチョフ 絵. 内田莉莎子 訳: ウクライナ民話. 福音館書店, 1968

 

文責:酒井奈緒美(研究分担者, 国立障害者リハビリテーションセンター)

AMED研究「発達性吃音の最新療治法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」
研究代表: 森 浩一(国立障害者リハビリテーションセンター)